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チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲

来週の日曜日、conducted by 大植さんの大フィルのコンサートが狭山であります。
プログラムはベートーベン・交響曲第3番「英雄」(←9月8日の大阪コンサート@シンフォニーホールでも演奏されます)、そして表題曲。
大植さんの英雄への興味はもちろんのこと、注目するのはコンマス長原幸太くんがチャイコでソロを弾かれるということ。なぜなら、私がこの曲のベストプレーヤーと思っている五嶋みどりさんの教えを彼も受けており、その彼がどのようにこの曲を弾くのかに大変興味があるのです。

Vnのコンツェルトといえばまず筆頭に上がるのはチャイコかメンデルスゾーンです。それくらいの超有名な曲、年少さんでもかなり弾きますし、本当に名曲です。それだけにまず失敗演奏はありえないし、逆に余程の演奏をしないかぎり、ヴァイオリニストの個性・才能を観客に印象付けることは難しい。
そんな曲を五嶋みどりさんは神がかり的に演奏されました。このブログのライフログにも載せていますこの演奏です。今から11年前、1996年3月、アッバードのベルリンフィル(BPO)、フィルハーモニーでの演奏です。この演奏はまた、彼女のヴァイオリニストとしての生き様を追うNHKのドキュメンタリー、”ヴァイオリニスト 五嶋みどりの世界”でも放送されたためご覧になった方も多いと思います。
生ではなくてもその演奏のすごさはストレートに伝わってきました。「すごいものを聴いてしまった。」
この演奏には彼女のヴァイオリニスト人生にとって大きなターニングポイントだったようです。彼女のお母様、五嶋節さんの人生をドキュメントした『母と神童』、そして3年ほど前?に同じくNHKで放送された「五嶋みどり Midori 絆」で初めて公にされたと思うのですが、みどりさんは音楽はもちろんそれを含めたくさんのことで非常に悩んでいらしたのですね。NYUの大学院で心理学を学ばれたのもそれを克服するためだったのだと思っていますが、悩み続け演奏をしばらくストップしていた彼女が演奏活動に戻ってきたのが、このBPOとの競演だったのです。
個人的なことですが、私自身この時期はかなり精神的にまいっており自分と同い年であるみどりさんのこの演奏を見て(聴いて)、大げさではなく生きる力をもらったのです。本当に人間ここまで涙が出るのかというくらい泣きました。
後ほど彼女のエピソードを知り、歴史に残る名演奏の生み出される背景・要因には演奏家の精神状態というのもあるのだと思いました。

このように私にとっては大変思い入れの強い曲です。彼女の演奏を聴いて後、ジョシュア・ベル、川久保賜紀さんの演奏も短い間隔で聴きましたが、彼・彼女も、そして誰が演奏してもみどりさんをしのぐ演奏には出会えていません。
長原くんは恐らくあちこちでこの曲は演奏されてきているでしょうが、彼がコンマスを務める大フィルで、大植さんの指揮で、ソロを演奏する。きっと彼にとっても何かしらのターニングポイントになるのではないでしょうか。
と、ここまで期待しすぎると、当日の演奏によってはがっかり、なこともありえるので平常心で聴くことを心がけますが、それでも「英雄」=コンマス、そして大フィルでソロ(半端な曲でない)、という彼の登板の意味づけを考えると、相当のものをもってきてくれる、いえ、もってこないとね、と思ってしまうのです。偶然にもみどりさんがこの曲を演奏された時とほぼ同じ年齢ですし。

みどりさんは日本を通り越して世界の音楽家の誇りです。彼女の志の高さ、温かさ、活動のスケールは群を抜いています。レベルが違います。しばらく彼女の演奏を生で聴いていません。なんだか無性に聴きたくなってきました・・・
余談ですが、みどりさんのこのCDのもう1曲がショスタコーヴィッチのVn協奏曲です。
CDを購入してしばらくは、1:チャイコばかり聴く、2:CDとめ忘れたのでショスタコを聴いていた=>なんてしんどい曲だろう、3:またショスタコを聴く=>変な曲、身体がバラバラになりそう。。。 4:聴いていると意外にいい曲ではないか?
そして今、すっかりショスタコファンです。
by felice_vita | 2006-08-19 23:20 | 国内オケ
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