第3の感性を持つピアニスト、山本貴志くん

昨日、シンフォニーホールへ山本貴志くんのリサイタルを聴きにいってまいりました。

第15回ショパン国際ピアノ・コンクール入賞記念
山本貴志
デビュー・ピアノ・リサイタル
2006・9・29(金)19:00
ザ・シンフォニーホール
主催/朝日放送

♪プログラム
ショパン:夜想曲 第20番 嬰ハ短調 遺作
ショパン:ワルツ 第2番 変イ長調「華麗なる円舞曲」op.34-1
シマノフスキ:「仮面劇」より シェヘラザード op.34-1
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 op.36(1931年版)
***
ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 op.66
ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 op.35
ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調「英雄」 op.53
***
アンコール 
・モーツァルト ピアノソナタ第13番 変ロ長調K333より第2楽章
・ショパン 12の練習曲第4番 嬰ハ短調12-4


まず舞台へ登場した彼をみてびっくり、1983年生まれだそうですがプロフィール写真より3歳若く見えます。プロフィール写真は、東幹久の若い頃のようですが、実際の山本くんイメージが全然違いました。どちらかというと”中学生日記”系?です。
そしてピアノの前へ。彼はまず白いハンカチをポケットから取り出し手をふき、ピアノの鍵盤をふき、再び手を。椅子を引きしばし息を整え、黙考の後に第1音が作り出されました。
なんて丁寧な音でしょう。粒が際立つというのとは少し違い、1音1音は丁寧なのに流れるよう。しばしば真珠、宝石のよう、と表現されるショパンのピアノ曲ですが、彼のつくる音楽は1等級の流れ星がひとつ、またひとつ、と濃紺の夜空をよぎるようなかんじ。
シマノフスキのシェヘラザード、初めて聴きましたが、説明文にあるとおりドビュッシーとラヴェルを感じさせます。例えば、どのような曲かを知らない人が”中国の不思議な役人”と聞いてイメージする不思議さとオリエンタリズムを湛えた曲、といいましょうか。名曲です。
ショパンコンクール入賞の彼のデビューリサイタルなのでメジャーなショパンの音楽が並びますが、最もすごさを感じたのはラフマニノフのピアノソナタ。この曲はもはやピアノソナタではなくピアノコンツェルトです。見事な弾きっぷりです。

プログラムに書かれた伊熊よし子さんによる紹介文、
・・・
よく、音楽家がステージに登場したときからその演奏は始まっているというが、山本貴志も登場した瞬間から音楽が聴こえてくるよう。一途で真摯で礼儀正しく温和な雰囲気。だが、魅力はそれだけではない。ピアノと対峙した途端、音楽が一気に天に向かってのぼっていくような熱いパッションが生み出される。
(後略)
・・・
の通り、一途で真摯で礼儀正しいピアニストです。演奏前にハンカチを取り出して汗をぬぐう姿はピアノ界のハンカチ王子?
長野県出身だそうで、それが大いに納得できます。まじめで実直、粘り強い。演奏を終えお辞儀をするのも、まず正面、サイド、クワイア席の全方向へ、角度95度のお辞儀です。

技術力、表現力・芸術性、といったものでは言い切れないまったく別の感性を持ったピアニストという印象を受けました。風を聴くピアニスト、内面的なものではなく自然の美しさを音で表せる才能。
芸術家は年齢ではありませんね。「若いのに」「初々しい」「ピュアな」という枕詞は失礼に当たる気がしました。すでに確立された音楽家です。これからどのような音楽を聴かせてくれるのか楽しみです。

7時スタートで終了したのが9時過ぎ。オケのように自己パート休憩もtuttiもない、一切、手も気も抜けない。
ピアニストの精神力、集中力、体力はすごいです。

追記。
プログラムの構成、これぞショパン!ですが、偶然なのか意識的なのか並ぶ数字が記号的です。
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by felice_vita | 2006-09-30 12:39 | ソロ、リサイタル
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