サンクトペテルブルク・フィルをきっかけにいくつか。
河島 みどり著 『ムラヴィンスキーと私』(草思社、2005) 西岡 昌紀著 『ムラヴィンスキー 楽屋の素顔』(リベルタ出版、2003) ギドン・クレーメル著 『クレーメル青春譜 二つの世界のあいだで』(アルファベータ、2007) ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルの1983年の白ロシアでの演奏会、ショスタコ5番のディスクも同時に視聴。(フルート奏者は奥様だったのですね) ソビエト時代の日常、芸術家に対する国の体制、芸術家として生きること。 たった18年前のことなのに別世界、架空の、映画のような世界があったのだ。鉄のカーテンとはまことに正鵠。 ヴァン・クライバーン・コンクールの書籍だったか、ジュリアードの青春だったか、はたまた諏訪内サンの著書だったか忘れたけれど、ソ連からの参加者の背負う重い使命はかくもすさまじいものかということが書かれていたが、それを裏付ける話ばかり。 それでも、河島さんの著書からはにじみ出るマエストロのお人柄がなんとも温かく、ほっこりしていて心地よい。通訳を職業とする方はほんとに名文を書かれる方が多いですね。米原さんにしろ特にロシア語の方は視点も切れ味も読後の印象もずば抜けている。 ショスタコーヴィチの印象も、世間的なものでなくマエストロとの交流から見えてくるところが本来の彼(ショスタコーヴィチ)なのかと。きっと私が彼の曲に惹かれるのはこの部分なのだと思う。 ショスタコーヴィチ評伝は、英国におけるミルクと紅茶の問題のようなもの。どっちが先、どっちが正統でも関係ない、その中味が楽しめれば。 西島さんの著書は、河島さんのあとに読むと二度美味しい。 幻のムラヴィンスキー来日にどれほど日本が熱狂していたか、大阪万博の頃の日本のクラシックファンの様子、そしてマエストロはどのように音楽に接し、日本を楽しまれたのか。 (お父上がレン・フィルの招聘に尽力された方で、河島さんの著書の中にも、5度目の来日が幻になったのは西岡さんへの恩義もあったのではと書かれている。) その時代の熱狂、想像するだにこちらも興奮する。つむぎだされる音楽も、今のように世界規模の楽団移動、データの行き来がない時代はまったく違ったものだったのだろう。聴いてみたかった! クレーメル、1947年生まれ。約40年がソビエト時代、若くして西側への渡航を認められ(認めさせ)ても、ソビエトの影響力のいかに大きいことか。というよりも、亡命ではなく、正規ルートでソ連との行き来も認めさせる手腕もだが、ソビエトとの絆を切らないところ、切りたくはないという心を生じさせるというところが、ソビエトの不思議。
by felice_vita
| 2008-11-15 09:00
| 読書
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